さて、今回のみんなで考えたくてシリーズは「浦和レッズ」を題材とさせてください。水曜日に柏レイソル戦があります。実はその試合で一部の方を対象とし、試合の解説をすることになっています。本当は8/7に行われる予定だったのですが、雷で中止となりました。延期された試合は10/23(水)に行われます。延期されたことで、特に浦和レッズの立ち位置は変わっています。浦和レッズの監督はスコルジャに変更され、お互いの順位は16位と17位と、この試合に負けたほうが磐田との残留争いに名を上げることとなります。なんてこった。そんなデスマッチの解説をすることになるなんて!
↑このような企画です。講習会はすでに終わったので、水曜日は解説のみになります。なお、チケットの販売はもうありません。ご承知ください。
柏レイソルの現状の整理
相手の柏レイソルの試合を観察してきました。
8/7の前に柏レイソルについて書いた印象と、現在の柏レイソルの印象はほとんど変わりません。スーパーサブの木下がスタメンに定着し、他に誰かおらんのか!と叫ばれていたセンターバックには未完の大器こと立田が定着するようになったことでしょうか。前線に細谷、小屋松時代と比べると、木下へ放り込むことでパワーを押し付けやすくなったことが特徴となります。ただ、木下もかなり器用なので、柏レイソルの地上戦のクオリティが落ちたかというとそんなこともなく、サビオとジエゴは相変わらず元気です。
気になる点は、スーパーエースの細谷のゴールが少ないことでしょうか。個人的には色々な役割を課せられたことで、レベルアップしている印象もあります。木下の登場で細谷の役割も減りゴール前に集中できそうな環境が整ってきていますが、結果はまだついてきていません。さすがにシーズンが終われば、細谷は海外に移籍するのでしょうか。そのために垣田を獲得したような気がしています。
柏レイソルがチームとして苦手としているのはブロックはできるけど、プレッシングはあまり得意ではないことでしょうか。ミドルプレッシングとミドルブロック。プレッシングとブロックの違いはなんだと問われると、個人的な解釈は、プレッシングはボールを奪いにいく、ブロックは相手の攻撃を待つ、もしくは横パスなど明確なスイッチを持つとしましょうか。世界の流行はミドルプレッシングからのハイプレッシングへの移行です。最初からハイプレッシングを行わない。最初から行うと蹴っ飛ばされるからですね。
柏レイソルの詳細は記事に譲るとして、続いては触れるのが怖い浦和レッズについて考えていきます。
浦和レッズの現状の整理
ヘグモ時代に叫ばれていたことは、内容は良いけど勝てない!でした。スコルジャ時代に叫ばれていることは、内容も良くないし勝てないです。どんな地獄だ。
・ハイプレッシングが機能しない
最初のお題目はプレッシングです。私ごとですが、自チームでゾーンディフェンスのトレーニングを延々と行っています。ゾーンディフェンスを機能させるためには「人への引力」問題の解決を図る必要があります。ゾーンディフェンスで大事なポイントはボール、味方の位置です。相手にピン止めを許している場合ではありませんし、後方で特定の選手が集まって数的優位を作ろうぜとディフェンスラインが企むと、ゾーンディフェンスは機能しません。
ガンバ大阪戦で見せたように撤退守備で[442]はそれなりに機能しますが、防戦一方になってしまいます。ゴール前に闘莉王でもいればクロス連打大会に対抗できますが、闘莉王はいませんし、ショルツもいなくなりました。つまり、今の浦和レッズは相手をゴール前に近づけて守備を行うことはあまり得策とは言えません。だったら、前から奪いに行こうぜ!となりますが、「人への引力」問題にぶち当たります。「人への引力」とは、本当は前にいかないといけないのだけど、マッチアップの相手をスルーすることができないことを意味しています。
東京ヴェルディ戦では相手の配置に噛み合わず、FC東京戦では相手の近い距離感によるパス交換に苦しめられ、ヴィッセル神戸戦とセレッソ大阪戦では噛み合わない配置とサイドチェンジでゾーンディフェンスの泣きどころである逆サイドを利用されていました。キーパーがビルドアップの逃げ場として機能する時代に相手の3バックに2トップで追いかけ回すには仕組みが必要です。ちなみに柏レイソルは実にこの仕組み作りが上手いので、要チェックです。足りない部分をどのように解決するかをチームで共有できているからです。浦和レッズの現状はファーストラインが相手のビルドアップ隊の最終ラインと、どのように向き合うかがはっきりしていないこともあって、まるで機能していないことがやせるせない現状です。
なお、ヘグモ時代は[433]のプレッシングの形にこだわりすぎて機能していませんでした。ちなみに、セレッソ大阪の序盤戦もそんな雰囲気でした。マンマークだろうが、ゾーンディフェンスだろうが、守備の基準点の設定は大切になりますし、ファーストディフェンダーと斜めの位置を取り続けることは、ゾーンディフェンスだろうとマンマークだろうと自然と同じような形となります。ボール保持者へのサポートの形とゾーンディフェンスの形は噛み合うようにできるからですね。
簡単な解決策は撤退守備でガンバ大阪戦を繰り返すしかありませんが、それを許さない事情もあります。それがコーナーキックの守備です。
・コーナーキックのゾーンディフェンスが機能していない
東京ヴェルディ戦でゾーンディフェンスとマンマークのミックスに修正が入りました。コーナーキックの守備は哲学的な要素も入るので、なかなか修正に踏み切ることができない領域です。しかし、東京ヴェルディ戦でまたもゾーンディフェンスの外からの飛び込みで逆転ゴールを許し、なにがどうなってんねん!と突っ込まれる時代となりました。
アーセナルが相手のキーパーの可動範囲をコーナーキックのときに制限する時代です。セットプレーの進化は尋常ではありません。東京ヴェルディ戦までは完全なゾーンディフェンスをひく浦和レッズのコーナーキックの守備に対して、ゾーンディフェンスの外を起点に崩しまくる多くのチームが目撃されています。ゾーンディフェンスを軸とするならば、ひとりひとりの守れる範囲を広げるくらいしか解決策はありません。ただし、段々とスモールラインナップになっていく浦和からすると、そもそも相手のコーナーキックやクロス連打を受け入れることが得策とは言えない状況になっています。なので、撤退守備は解決策にはならないと切ない状況になっているわけです。だったら、ハイプレッシングを仕掛けるか、ボールを保持して試合をコントロールするかの二択となります。
・ビルドアップが機能していない
ヘグモ時代にさんざん取り組んできたビルドアップですが、現状はまるで機能していません。東京ヴェルディ戦では、セントラルハーフをセンターバックの列におろし、サイドバックを早々と高い位置にあげて、ウイングへのパスラインを作る、というよりは、低い位置でウイングにボールをもたせ、ウイングの能力を使ってボールを運ぶような策を披露しています。
ヘグモ時代のビルドアップがセンターバックから時間とスペースを作り、相手のプレッシングを引き受けることだとすると、スコルジャの現状は各々の立ち位置によって時間とスペースを作っていくことのように感じています。前者は自分たちの能力に依存する形ですが、後者は相手のプレッシングの論理によって機能するかどうかが決まる要素が大きいです。浦和レッズのセンターバックがボールを持たされ、悩む場面が多いときの解決策がチームにあるかないかが後者の考え方では大事になってきます。
だったら、素直に蹴っ飛ばせばいいものですが、前回のスコルジャ時代から浦和レッズは妙にボールを大事にする習慣があります。実際に西川のビルドアップにおける出番はスコルジャ時代になって少し増えました。この習慣は誰の意思によるものなのかは謎が深まりますが、ヴィッセル神戸戦で見せたように、蹴っ飛ばしたほうがいいグランドコンディションでも繋ぎたがります。
グスタフソンがいれば、抜群のタイミングのサポートと長い距離を蹴ることができるスキルを活用することで、一気にボール保持局面を解決することができます。しかし、怪我がちでフル出場は無理な雰囲気なので、他の人達でやりすごすしかありません。でも、スコルジャ監督になってjから悪いことばかりではありませんよね?と聞かれれば、確かにこの4試合で可能性を感じさせる場面もありました。ただし、それはある程度の矛盾を内包しています。
・可能性を感じさせるときの共通点
少し前に自由人の中島翔哉がネットをざわつかせていました。ビエルサのチームは厳格な原則で機能していることで有名です。ただし、ビエルサはチームにバグを必要としていました。チームが厳格な原則で動くことで相手からすれば起きることが予想しやすくなるからです。このバグの意味はチームの決まり事から逸脱するプレーをすることを意味しています。例えば、ウイングはサイドにはっておけ!という指示を裏切って内側に来ることがわかりやすい例になるでしょうか。代わりにサイドバックが上がってバランスを維持すれば別に問題にならないんですけどね。
浦和レッズがビルドアップや相手陣地の振る舞いで可能性を感じさせるときは、このような選手の距離が近いときに選手同士で創発が起きたときです。ただし、創発が起きるかどうかは阿吽の呼吸にかかっており、この部分にすべてを賭けるには博打打ちが過ぎます。また、選手の距離が日常に近くなれば、少ない人数での管理を相手に許してしまいます。実際にビルドアップやその他諸々の場面でセントラルハーフの立ち位置が味方の時間とスペースを奪っている場面は散見されています。
細かいことは忘れて、中島翔哉、松尾などの個のタレントに頼ることも悪くはないと思いますし、個人的にはリンセンとチアゴ・サンタナを並べて、後半途中から快速コンビの登場でもいいような気はします。この順位のチームが構造がどうこういっている場合ではないと思うんですよね。守備の強度が!といっても、現状はその守備も機能しているとは言いにくい現状です。来季に向けての前に、今季をどうにかしなくてはいけない状況になってしまっているわけで。ビルドアップが機能していない状況でサイドにはっても良いことはありません。
簡単なプレビュー
柏レイソルは特に変わりません。
[442]を基調とするプレッシングでミドルブロックで構えながらプレッシングにだんだんと移行していくスタイルと、キーパーと低い位置でプレーするセントラルハーフをビルドアップ隊としてボールを保持を安定させ、前線の選手の立ち位置で勝負するスタイルは健在です。相手の[442]ブロックを攻略する糸口はすでに持っていて、内側レーンと大外レーンからの襲撃は得意としています。さらにシンプルに木下への放り込みから脅威の左サイドコンビの躍動というオプションもあります。
そして、浦和レッズは[442]で守ることは決まっています。柏レイソルのボール保持に対してどの位置から、どのようにプレッシングにいくかが注目です。キーパーやセントラルハーフを使った3バック化も柏レイソルは行ってきます。2トップでどのように相手の3枚にプレッシングをかけるのか、後方からの加勢を使うのかが最初の分水嶺になるかもしれません。
そして、柏レイソルのプレッシングの前に、浦和レッズはセントラルハーフを下ろすのか。下ろすでしょう、多分。注目点はそのときにサイドバックとウイングの関係性はどうなっているのかです。東京ヴェルディ戦で見せたように、修正ポイントはサイドの関係性にあります。今度は相手の配置と噛み合うので、浦和レッズが中断期間に取り組んだ修正がハマる可能性もあります。前回に通用しなかった策が次の相手には機能することもあるのがJリーグあるあるです。
さて、どうなる。。。
ひとりごと
というわけで、負けたほうが地獄に落ちるような試合の解説をすることになってしまいました。でも、トーナメント式、一発勝負の決戦方式のほうが色々なことは仕掛けられるんですよね。良くも悪くも、両チームともにスタイルがはっきりしているので。その辺りの差異について触れていければなとは思っていますが、どうなることやらなんだぜ!!!!
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